「経営管理ビザ」は「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動をおこなうことができるビザ」とされています。
つまり、外国人経営者の日本での会社経営・もしくは国内事業の管理を想定したビザです。
経営管理ビザを取得するためには、会社を登記し、許可が下りたらすぐにでも営業が開始できる状況まで準備してから申請しなくてはなりません。
会社を設立してからじゃないと申請できないのに、経営管理ビザが不許可になると、会社が経営できないので「失敗できない」ビザなのです。
本サイトでは、そんな経営管理ビザを取得するために必要な条件をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
記事の内容
そもそも経営管理ビザとは
経営管理ビザは、名前の通り企業の経営者・管理者などが取得するビザであり、通常の就労ビザより条件が厳しく不許可になりやすいビザです。
ビザには様々な期限がありますが、経営管理ビザについては、初回はほぼ1年更新。翌年の再審査でよほど業績が良ければ3年更新に延びますが、基本的には2回目も1年更新です。
初回から3年更新ビザの取得はかなり難しい上、事業が赤字の場合は継続の際に厳しい判定がなされます
なお、法務省の統計によると、在留外国人の総数は 2,829,416人、そのうち経営管理ビザの人は26,148人です。経営管理ビザを取得している在留外国人は全体の1%以下という事がわかります。
法務省【在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表】2019年6月末より
経営管理ビザの種類
一言に経営管理ビザと言っても実は種類(カテゴリ)が4種類あります。
カテゴリは申請者がどんな企業に属するかによって変化します。
カテゴリー1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 |
---|---|---|---|
(1) 日本の証券取引所に上場している企業 (2) 保険業を営む相互会社 (3) 外国の国又は地方公共団体 (4) 日本の国・地方公共団体認可の公益法人 (5)高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業) ※対象はリンク先の「イノベーション促進支援措置一覧」をご確認ください。 (6)一定の条件を満たす企業等 |
前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中,給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人 | 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) | 左のいずれにも該当しない団体・個人 |
参考:法務省より
ほぼ全ての方がカテゴリ3、カテゴリ4に属しビザ申請も複雑可する場合がほとんど。
逆にカテゴリ1、2は運営母体がしっかりとしている大企業がほとんどなので申請も比較的簡単に行うことができます。
経営管理ビザでできること
経営と管理がでは実際に経営管理ビザを取得して何ができるのでしょうか?
経営管理ビザを取得した外国人の方は主に2つのことが許可されるようになります。
新規事業の経営
経営者として起業し、新規事業を行うことができるようになります。
ここで指す「経営者」とは代表取締役だけでなく、代表権のない取締役である平取締役や監査役も含まれています。
簡単に言うと外国人の方が日本で会社を立ち上げることができるようになります。
既存事業の経営管理
すでに存在する日本企業に経営者や管理職として参画することができるようになります。
また、他者が日本で経営していた企業が譲渡された場合、そのまま継承して経営・管理を行うことも認められます。
ここで指す「管理職」とは具体的に部長クラス・工場長、支店長などが当てはまります。管理職である以上、マネジメントの対象になる部下・従業員の存在が必要になります。
最近話題の日本の会社の外国人社長もここに含まれますね。実はみなさん「経営管理ビザ」を取得して入国しています。
経営管理ビザで経営できる業種・業態は幅広い
ちなみに、日本国内で適法でないとされている麻薬の売買や賭博、売春などの事業以外であれば業種や業態に制限はありません。
飲食店や貿易会社、不動産業や観光業など出身国のリソースを十分に生かしたビジネスに挑戦できます。
ただしすることができる業種は多いものの厳しい要件を満たさないとビザ自体を取得することができません。
関連記事:経営管理ビザを取得して飲食店を営業【外国人でも開業可能】
関連記事:経営管理ビザを不倒産投資で取得する際のポイントや注意点を解説
経営管理ビザの厳しい要件
ではその厳しい要件をご説明してきます。
まず、「経営」から見てみましょう。経営管理ビザを経営者として取得する場合は、日本で会社を設立もしくは個人事業主として届け出を行う必要があります。
加えて、以下の条件を満たさなければなりません。
事業所の要件
まず、経営管理ビザのため、日本における事業を行うためのビザなので、事務所または店舗が日本にすでにあることは必須条件です。
その事業所は、会社を設立している場合は法人名義での契約で、使用目的は事業用である必要があります。
実際にビザ申請の際に物件の契約書も見られますが、契約が住居用の場合は不可です。契約書上に事業での利用を認めている記載に変更してもらう必要があります。
契約形態別に申請が可能かどうかをまとめると以下の通りになります。
○賃貸事務所(法人契約)
○レンタルオフィス(独立した個室がある場合)
○インキュベーションオフィス
×自宅兼事務所(広い物件でも不可)
(自宅兼事務所については、住居目的以上の使用が認められており、個人から法人に転貸借することが同意されていて、事業目的のための部屋がちゃんと設けられているなど、事業を行う要件に該当する場合は立証できれば許可が下りる可能性も。要相談)
×マンスリーマンション
×バーチャルオフィス
×共同事務所・他の事務所の間借り
×移動式の車両
事業所は、内装や、事業に必要な設備(電話、FAX、PC、コピー機など)が揃っていて、許可が下りたら営業がすぐにできる状況にしておく必要があります。
事業所が店舗の場合は、経営管理ビザの申請者はあくまで経営管理する立場であるため、店舗内に管理用のオフィススペースを設けておかなくてはなりません。
ここまで用意しなくてはならないので、不許可になった場合は相当な痛手ですね……
関連記事:経営管理ビザはレンタルオフィスでも取得できるの?【物件契約の注意点解説】
事業の規模の要件
あえて日本に住む必要があるビジネスだから、経営管理ビザが降りるという前提なので、小さいビジネスでは経営管理ビザは許可されません。
以下のいずれかを満たす必要があります。
資本金の額または出資の総額が500万円以上
資本金の額が500万円以上のビジネスの規模である必要があります。
この500万円は1名につき500万のため、パートナーと合わせて2名で500万というような内訳では認められません。
また、この500万円については、入国管理局から資金源を審査されます。どこからどうやって持ってきたのか、あるいはどうやって貯金したのかということです。
資金源については、客観的な証拠が残るように、自国からであれば送金履歴が残るように送金してもらい、自分で貯金したのであれば、銀行預金として貯金している状況を確認できるようにしてください。
特に、年齢が若い人、女性、初めて起業する人、留学生から起業する人は突っ込んで聞かれやすい傾向があります。
なお、実はお金を持っていないのに嘘の登記をして経営管理ビザを得た場合、公正証書原本不実記載等罪という犯罪になります。もちろんビザは取り消しになるのでご注意ください。
この500万円については、詳しくは以下でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。
関連記事:経営管理ビザ取得に必要な500万円【理由や疑問をプロが解説】
経営または管理に従事する者以外に2人以上の常勤の職員がいる規模
もし、資本金の額が500万円以上ない場合でも、経営管理ビザの申請者以外に2人以上の常勤職員を雇用している場合は申請が可能です。
ただし、常勤職員を雇用している場合でも、資本金は少なくとも300万円は必要です。
なぜ常勤職員がいるとOKになるかというと、そこで雇用され、給与から納税することで日本経済にプラスになるからですね。
なお、経営者の場合、あくまでできることは「経営」のため、飲食店やエステサロンの現場に立って業務をおこなうことができません。この場合は必然的に料理人やホールサービススタッフ、エステティシャンなどの常勤職員を雇用することになります。
個人事業主として申請する場合は「在留資格変更許可申請」の場合のみ
個人事業主で経営管理ビザをとれるのは、「在留資格変更許可申請」に限られます。
つまり、すでに何らかのビザを持っていて、そこから在留資格を変更する場合のみ、個人事業主として経営管理ビザの申請ができるのです。
個人事業主の経営管理ビザの条件も会社設立と同じ(事務所の確保と500万円以上の資本金)ですが、個人事業主は資本金の概念がないため個人の通帳に500万円が入っていても意味がありません。
個人事業主の資本金の証明としては、ビジネスに必要な事務所・店舗、備品、商品仕入れなどで必要額を使い切り、その領収書等を入国管理局に提出する必要があります。
関連記事:個人事業主でも経営管理ビザは取得できる?【注意点やポイントを解説】
事業内容における要件
次に事業内容における条件です。
基本的に、事業内容が合法であれば業種や業態に制限はありません。
どんな種類の事業内容でも経営管理ビザの申請はできますが、その事業の安定して収益を上げ、継続できることを立証する必要があります。
営業許可について
古物商や飲食店など、事業を行うのに特別な許可が必要である場合は、ビザを申請する前に取得を済ませておきます。
社会保険について
会社組織であれば、1人社長であっても社会保険(厚生年金・健康保険)は強制適用です。会社設立と同時に年金事務所にて手続を行いましょう。
人を雇用する場合は労働保険(雇用保険・労災保険)が必要です。ハローワーク似て確認をしてください。
関連記事:経営管理ビザで知っておくべき保険のアレコレ【詳しく解説します】
事業の安定性と継続性について
自分が事業を行うことで、売上がどのくらいになり、それにまつわる経費がどのくらいになるかという具体的なビジネスモデルを、事業計画書の作成を行って示す必要があります。
事業の安定性の点で考慮されるポイント
・売上高(商品・サービス・取引先別)、経費、利益、従業員数等の推移と見通し
・合理的な前提に基づく具体性のある業績予想数値
具体的な営業品目、取引先など
・事業が安定的に立ちゆく理由
販売ルート、仕入れ、価格設定、コストやノウハウや知識、人脈、業務経験など
などなど、ビジネスの内容を軽く説明ができるだけでなくしっかりと先の展望まで見つめて事業計画書に書き記しておかなければ経営管理ビザ取得は難しくなります。
日本人ビジネスを行う場合も同じですが、しっかりと計画を立てなければ会社は立ち行きません。
外国人は会社を立ち上げる前にその審査をおこなうわけですね。
関連記事:経営管理ビザの事業計画書の書き方をプロが解説【テンプレート付きで簡単】
経営における要件【経営管理ビザで現場で働くことはできえるの?】
経営管理ビザは「経営」もしくは「管理」するのビザのため、現場対応はできないというのが就労ビザとの大きな違いです。
もし経営するのが飲食店などであれば、ホール担当や調理担当は別に人を雇用しなければなりません。登記上の名ばかり経営者では申請許可が下りないのです。
経営管理ビザはあくまで代表者や管理者のビザなので要注意です
経営管理ビザで日本の会社の管理者となる場合の要件
先ほどまでは経営についての要件でしたが、
「管理」
つまり既存の会社の代表や役員になる場合の要件も経営管理ビザには含まれています。
管理を詳しく説明すると「事業の管理に従事」会社の部長や支店長などの管理者として働く場合を指します。つまり、国内企業の取締役などです。
しかしこれもいきなり管理ビザが取れるかという問いそういうわけではなく、以下の条件が必要となります。
・事業の経営または管理について3年以上の経験(大学院において経営または管理に係る科目を専攻した期間を 含む)
・日本人が従事する場合と同等額以上の報酬
この場合、既存のビジネスから見た場合に、あえて外国人を招聘して日本に居住させる必要性との整合性や、財務諸表の内容などが精査されます。
気を付けたいのが、経営管理ビザを取得する前の出張です
日本法人の経営者に就任して登記され、かつ、日本法人から報酬を受領するのであれば、たとえ会議や業務連絡や商談のために来日する場合であっても、商用の短期滞在ビザでの来日は違法になってしまいます。
日本での業務はあくまで経営管理ビザが取得できてからにしましょう。
経営管理ビザに必要な書類
経営管理ビザを取得するには以上の要件を必ず満たす必要がありますが、
ビザを申請する上で必ず必要な書類があります。
書類は当てはまるカテゴリによって分かれており、
カテゴリ1・2・3・4共通書類 (カテゴリ1・2はこの書類だけで良い) |
1 在留資格認定証明書交付申請書 1通 ※地方出入国在留管理官署において,用紙を用意しています。また,法務省のホームページから取得することもできます。 2 写真(縦4cm×横3cm) 1葉 ※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。※写真の裏面に申請人の氏名を記載し,申請書の写真欄に貼付してください。3 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上,404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通4 上記カテゴリーのいずれかに該当することを証明する文書 適宜 カテゴリー1: 四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し) ・主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し) ・高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書(例えば,補助金交付決定通知書の写し) ・ 上記「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例えば,認定証等の写し)カテゴリー2及びカテゴリー3: 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) |
カテゴリ3・4に必要な書類 (カテゴリ3は上記+この書類のみで良い) |
5 申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1)日本法人である会社の役員に就任する場合 役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し 1通 (2)外国法人内の日本支店に転勤する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合 地位(担当業務),期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書(派遣状,異動通知書等) 1通 (3)日本において管理者として雇用される場合 労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき,労働者に交付される労働条件を明示する文書(雇用契約書等) 1通 6 日本において管理者として雇用される場合,事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有することを証する文書 (2)関連する職務に従事した期間を証明する文書(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む。) 1通 7事業内容を明らかにする次のいずれかの資料 (2)勤務先等の沿革,役員,組織,事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書 1通 (3)その他の勤務先等の作成した上記(2)に準ずる文書 1通 8 事業規模を明らかにする次のいずれかの資料 (2) 登記事項証明書 1通 ※ 7(1)で提出していれば提出不要 (3)その他事業の規模を明らかにする資料 1通 9 事務所用施設の存在を明らかにする資料 (2)賃貸借契約書 1通 (3)その他の資料 1通 10事業計画書の写し 1通 11直近の年度の決算文書の写し 1通 |
カテゴリ4に必要な書類 | 12 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料 (1)源泉徴収の免除を受ける機関の場合外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収をを要しないことを明らかにする資料 1通(2)上記(1)を除く機関の場合ア 給与支払事務所等の開設届出書の写し 1通イ 次のいずれかの資料(ア) 直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) 1通 (イ) 納期の特例を受けている場合は,その承認を受けていることを明らかにする資料 1通 |
と膨大な枚数の書類が必要となります。
以上のカテゴリ1・2は比較的書類を準備することは簡単なのですが、カテゴリ3・4は書類のみでも用意するのが難しくなります。
ただ、経営管理ビザを取得する方の大抵はカテゴリ3・4に属しており、この書類を不備なく用意しなくてはビザを取得することができません。
関連記事:経営管理ビザに必要な書類を専門家がまとめました!【新規・更新にも対応】
経営管理ビザを取得しやすい人
経営管理ビザを取得するには、必要書類等の準備をしっかりと行い、適切な手続を経なければなりません。そしてその過程では、いくつかの厳しい要件を満たしていることを示さなければならず、日本にやってきて起業・経営活動を行うことにつき相応しい人物であると評価してもらう必要があるのです。
そこで、経営管理ビザの取得要件を単に形式的なものと考えず実質的に捉え、どのような人物であれば取得がしやすいのか考えることが大切になります。
資金が潤沢な人
経営管理ビザ取得のためには、資本金額が500万円必要などと言われています。ある程度の事業規模が求められることも間違いありませんが、重視されるのは事業が継続できるかどうか、安定して活動を続けられるかどうか、というところです。
ある程度資金が用意できなければすぐに事業を継続できなくなってしまい、赤字状態から抜けられず、そのまま倒産ということにもなりかねません。特に初年度や立ち上げから数年は赤字となることも多いため、そのことを見越した資金の準備が必要と言えます。
逆に言えば、潤沢な資金を用意しておけばしばらく赤字が続いたとしても事業は継続できますし、長い目で見て黒字に持って行くことができるという計画も通りやすくなります。
ビザ取得に最低限必要と言われている500万円を用意した場合と、さらに多くの資金を用意した場合とでは、評価の厳しさも変わってくるでしょう。もちろん、潤沢な資金があったとしてもビジネスの内容があまりにもぞんざいであるのなら取得はできません。しかしぎりぎり経営管理ビザ取得が認められるレベルの資金を準備している人と比べれば、その取得難度を下げることはできるでしょう。
資本金がある基準を超えると課税の問題なども出てきますので、実際にはいくらを資本金とするのか税理士等と相談をすることが大切ですが、取得可否にだけ着目するのであればやはり大きいに越したことはないでしょう。
日本に協力者がいる人
こちらは手続上のハードルを下げられるという意味になりますが、日本に協力者がいる人といない人とでは結果として取得のしやすさが変わってきます。法改正などを通じて、外国人単独でも取得できるよう少しずつ制度も変わってきてはいますが、現状、やはり国内の協力者はいたほうがいいでしょう。
その理由の一つは、事務所の契約を締結させやすくできるというところにあります。日本にまだ住所も持っていない外国人に対し物件を貸すということは大家にとってもリスクがあり、なかなか交渉が上手くいかないこともあります。契約をしたところで本当にビザを取得して日本にやって来られるのか、来日後賃料をしっかりと納めてくれるのか、などと心配になるのです。日本に住む協力者がいるのであれば、その者に代わりに賃貸契約を結んでもらうこともできますし、交渉のためにわざわざ一度来日するなどの手間も省けます。
他にも、協力者がいることで様々な手続がスムーズにこなせますし、特にその者がコネクションを有しているのであればより取得しやすくなるでしょう。協力者と繋がりのある相手が取引先になってくれれば起業後すぐに売り上げを出すこともできますし、取引先が確定しているのであればビザ申請の場面でも良い印象を与えることができます。
関連記事:経営管理ビザを共同経営で取得するための要件とは?事例も交えて解説
過去に起業経験がある人
協力者の存在によって手続がスムーズになり、潤沢な資金でしばらく利益が出せなくても継続できる状況を作り出せたとしても、最終的には黒字の状態を維持できる会社にできなければなりません。審査においても、現実的に利益を生むことのできるビジネスを展開しそうであると評価をもらわなければなりません。
その評価において一つポイントとなるのは過去の経歴です。例えばこれから始める事業に関して職務経験があるという事実も有利に働くことでしょう。しかし経営管理ビザではその者が経営もしくは管理をすることになるため、単なる従業員としての経験だけでなく、起業から会社経営の経験を有している方が取得もしやすくなると言えます。
当然、ただ起業をしただけでは不十分で、「その結果大きな利益を生むことができた」「長期的に事業を継続できた」などの実績を持っていることが重要となります。過去に起業した分野で挑戦する、これから日本で起業するのと同様自国以外で起業して成功させた、などの経験があれば取得もしやすくなるでしょう。
論理的・説得的な事業計画を立てられる人
過去の実績を持っていない人でもビザが取得できないわけではありません。ただこの場合だと、成功した例を示すことができないため、これからの計画から将来性があると見込んでもらう必要があります。
こういった人が最も力を入れるべきは「事業の計画」、並びに「事業計画書の作成」でしょう。あえて2つに分けたのにも意味があります。なぜならいくらレベルの高い事業計画を立てていたとしても、その内容が審査官に伝わらなければ意味がないからです。
取得後ビジネスを成功させることはできるかもしれませんが、審査に通らなければ意味がありません。
そのため審査に通るための事業計画書を作成するということも非常に重要になってきます。
非現実的な内容がNGなのはもちろん、書き方も主観的ではいけません。論理的に計画内容を示し、その計画書を見た人に、確かにその計画に沿って進められそうだと思わせる、説得するような内容であることが大切です。そのため論理的かつ説得的な事業計画を立てられる人は経営管理ビザを取得しやすいと言えるでしょう。
経営管理ビザが必要になるよくあるケース
経営管理ビザはその名の通り経営者や管理職として就業する場合に必要になるビザということが分かりました。
とはいえ、具体的にどのような状況で発行することが想定されているのか、あまりイメージが湧かない方が多いのではないでしょうか。
経営管理ビザが必要になるパターンとしてよくあるケース4つを紹介します。
日本ですでに仕事をされている方が、独立して起業される
他の在留資格を所持して働いている外国人の方が起業をするタイミングで在留資格の切り替えを行うケースが多いです。
このケースでは日本滞在歴が長く、ビジネス経験もある程度積まれており日本語での意思疎通も行える外国人が多いです。
そのため、経営管理ビザの承認許可が降りやすい内容で申請書類を作成できる可能性が高いです。
ただし、経営管理ビザへの変更申請は、開業した会社で実際にビジネスが稼働できる状態になってようやく申請できるようになります。
そのため、すでに所持している在留資格のままでビジネス稼働に向けた準備を速やかに進める必要があります。
海外に在住する外国人の方が、日本に住む協力者と起業する
本人は日本に住んでいないものの、ビジネスパートナーが日本におり、その人と連携を取りながら日本国内での起業に向けた準備を行うケースでも経営管理ビザの申請が必要になります。
2015年4月からは経営管理ビザが新設され、日本に住む協力者がいなくても外国人一人で起業し経営管理ビザを取得できるようになりました。
とはいえ日本語を話すのが得意ではない方の場合は協力者がいた方がスムーズに進められるでしょう。
会社の設立準備が進んでおり、見通しのある事業計画があることを証明することで、会社を設立するための準備に使える有効期限が4ヶ月の経営管理ビザが発行されます。
準備期間の4ヶ月のビザはこちらを参考にしてみてください。
関連記事:経営管理ビザを共同経営で取得するための要件とは?事例も交えて解説
既存の企業が、新たに外国から経営者を招へいする
外国人パートナーと手を組んでビジネスを行う場合、外国人パートナーに任せる役職や業務内容によって取得すべき在留資格が変わってきます。
経営管理ビザが必要になるケースは会社の最高責任者である代表取締として招へいしたり、経営管理を委任する場合などが考えられます。
このケースの場合、既存のビジネスと照らし合わせて外国人パートナーを招へいする必要性の調査や財務諸表の内容精査が入ります。
そのため、会社を新設して経営管理ビザを申請するよりも複雑で取得難度が高くなることも珍しくありません。
留学生が卒業後に起業する
留学のために来日したものの、卒業した後にそのまま起業を考えるパターンもあります。
しかし、詳細は後述しますが一般的に留学生が経営管理ビザに切り替え申請を行い、承認を得るのは難しいと考えられています。
そのため、大学卒業後、すぐに起業するのではなくまずは社会人として一定期間働いてから申請を行うのも一つの有効な手段として考えられています。
卒業後すぐにでも起業したい場合は緻密な事業計画書をはじめとする資料作成が必須となります。ビザ取得支援会社に相談し、アドバイスを得ながら申請を行うケースが多いです。
留学生が経営管理ビザに変更する際に注意するポイント
なかでも申請時に注意が必要となるのが留学生の申請で、申請難度が高いことで知られています。
留学という在留資格で来日している外国人の中には、就労目的で日本に滞在しているケースが少なくありません。それに伴い、就労目的で滞在していることで大学の卒業ができなくなった時に、経営管理ビザへの変更申請を悪用した不法滞在の事例が残念ながら増加しています。
これらの背景をくんで、留学生からの申請は他のケースよりも慎重に審査されているのです。
そのため、虚偽ではなくれっきとした起業を目指して申請を行う場合は綿密な準備が求められます。
留学生が申請を行う場合は以下4点に当てはまる要素がないか、注意するといいでしょう。
関連記事:経営管理ビザに学生(留学)ビザから切り替えることはできるの?【卒業後に起業したい!】
学校を卒業できない場合
学校での出席率が著しく悪い、成績不良などの理由から学校を卒業できない場合、在留状況が良好ではないと判断されます。
その状況で経営管理ビザへの変更申請を行うと「日本への滞在延期を希望しているだけではないか」と疑われる恐れが高く、申請が拒否されることがあります。
週28時間を超えての就労をしている
留学生ビザで滞在している外国人は、生活資金確保のために「資格外活動許可」を得れば原則週28時間以内のアルバイトなどが認められています。
しかし、大学の長期休暇期間以外で週40時間以上働いている外国人もなかにはいます。外国人労働者の収入は全て源泉徴収が行われており、正確に所得を捕捉されています。
これらのデータから週に28時間を超えた労働、月の収入に換算するとおよそ11万円を超えた外国人は在留条件に違反していると認識されます。
すると、経営管理ビザの申請に対しても信頼性が低いと見なされ、承認されないケースが多々あるのです。
500万円以上の出資金の元手の出所を証明できない場合
経営管理ビザの承認要件の一つに事業規模に関するものがあり、「500万円以上の出資」を行うことで法人格を取得し、ビザの申請を行うケースが多くなっています。
この出資金について、どのように準備したのか明確に提示できるかどうかが審査において重視されるようになっています。
留学生による正当な申請の場合、その額の規模や資格外活動許可で認められた範囲内で得られる収入額を踏まえると、親族や知人からの借り入れによって確保しているケースがほとんどです。
これを証明するためには送金記録や金銭消費賃借契約書、返済記録にまつわる情報をしっかり揃える必要があります。
証明できない場合、マネーロンダリングや見せ金のリスクが排除できないため申請が通らない恐れがあります。
事業に関する経験や知識が乏しい場合
経営管理ビザの承認可否を判断する要件の中に「安定的に事業を行うことができるかどうか」というものがあり、資本金や事業計画書などの資料から判断されます。
留学生はそもそも社会人経験が浅いことがほとんどであること、実務経験も知識も少ないため「事業継続性」において疑問視される恐れが非常に高いです。
そのような疑問を抱かれないよう、ビジネスの視点から見ても納得できるような事業計画をしっかり練り上げる必要があります。
経営管理ビザの審査期間はどのくらい?
2019年4月、ビザ審査業務も担っている「出入国在留管理庁」の大幅な組織再編が実施され、対応に当たる職員の数が増加しました。
しかし、申請件数が増加の一途をたどっていることもあり、審査にかかる期間は平均して「3ヶ月前後」と見ておくといいでしょう。
すでに海外で事業を展開している方や日本法人の責任者としてすでに就任している人などの場合は「高度人材ポイント制」を活用して申請すると、書類を提出してから10日程度でビザの取得許可が出ることもあります。
逆に書類の修正・提出対応が追加で発生したり繁忙期に申請を行うと3ヶ月以上かかることもあります。
審査期間や申請全体にかかる期間はこちらで解説しています。
経営管理ビザを取得した後は更新もしなくてはいけない
無事に経営管理ビザの許可が下りると日本で経営管理に従事することができるようになります。
しかし、取得して終わりではありません。
経営管理ビザは他の在留資格と同様、在留期限が定められています。
そのため、期限を超えて日本に在留する場合は更新手続きが不可欠になります。
一般的に経営管理ビザの在留期間は
- 初年度(1年目):1年
- 初回の更新後(2年目):1年
- 2回目の更新(3年目):事業の状況による
となっています。
更新申請は在留期限が切れる3ヶ月前(在留期間が3ヶ月以内の場合は約1.5ヶ月経過したタイミング)から行うことができるため、在留期限が切れる直前になって慌てて申請することのないよう計画的に更新準備を進めるようにしましょう。
関連記事:経営管理ビザの更新に必要な用件とは?【赤字の場合で不許可になりにくい対策を解説】
経営管理ビザのまとめ
経営管理ビザは、外国人の方が日本で会社を経営し、管理する上で必要不可欠なビザです。
その分取得する難易度も高く個人で全ての書類などを用意するには膨大な手間がかかります。
優秀な人材を育成しながら自国の産業を守ためには仕方ないんですよね・・・
もちろん個人で用意することができれば良いのですが、書類不備や不許可のリスクも高く余計な期間や費用がかかってしまいます。
そんな重要な申請の際にはプロの手を借りることも一つの手です。
まずは簡単なお問い合わせからして経営管理ビザ取得の悩みを解決しましょう。