経営管理ビザで知っておくべき保険のアレコレ【詳しく解説します】

日本には色んな種類の保険制度・サービスがあります。民間企業が実施しているものから国がやっているものまで様々です。

民間がやっているものは基本的に加入が任意で、必要な人だけ利用するという形になります。しかし国が実施しているもの、特に会社がその企業活動をする上で利用する保険の多くは、一定基準を境に加入が強制されます。

そのため外国人の方が経営管理ビザで日本国内に会社を立ち上げる場合でも、こうした保険制度に関しても知っておかなければなりません。

ここでは労災保険・雇用保険・社会保険など、経営管理ビザを取得する方が知っておくべき「保険」のことを解説していきます。

経営管理ビザでも社会保険の届出が必要

経営管理ビザ取得のために起業をした場合、国が定める保険に加入する手続きを行うことになります。

具体的にどのような保険に加入が求められるのかは、その会社に従業員が存在するかどうかで区別されます。

1人でも従業員を雇用している場合

まずは従業員を雇用している場合を見ていきましょう。

結論から言うと、1人でも雇用しているのであれば「労災保険」および「雇用保険」、そして「社会保険」への加入が必要となります。
もし雇用をしているにも関わらず労災保険に加入していない場合、その未加入が発覚すると保険料を追加徴収されることになります。過去2年分が遡って徴収されますので未加入のまま活動をしないよう気を付けましょう。

また、労働基準監督署から指導を受けたにも関わらず未加入であるなど、故意による未加入もしくは重大な過失による未加入であると評価された場合には、従業員に支給される給付金の一部または全額を会社が負担しなければいけない可能性もでてきます。そのため加入していない会社であったとしても従業員自体は労災による休業給付等を受けることができますが、会社側は大きなペナルティを受けることになります。

さらに、労働基準法違反による処分として、企業名が公表されてしまうことや罰金、懲役刑などを科せられる可能性もあります。

雇用保険に関しては管轄のハローワークにて加入手続きを行うことになりますが、この義務に違反した場合も罰則を受ける可能性がありますので、やはり忘れることなく加入するようにしなければなりません。懲役6か月以下もしくは罰金30万円が科せられる可能性があります。

しかしこれらの処分は違反があったからといって即座に執行されるわけではありません。まずは違反事実に関して労働局等が申告を受け調査を行います。その結果違反の事実が認められたならその違反を是正するよう指導および勧告がなされます。この時点ではまだペナルティは課せられていません。しかし勧告にも応じないのであれば法定されている各処分を下されることになります。

社長が1人だけの場合

経営管理ビザを取得した本人1人だけで起業し、その後従業員を雇わない場合を考えてみます。社長1人だけのケースです。

このとき何も保険に入らなくてもいいのではないかと思うかもしれませんが、社会保険への加入は必要ですので注意しましょう。

加入に関して例外もありますが、経営管理ビザを取得する人の場合だとその例外に当てはまらないことが想定されます。というのも例外的に未加入が認められるのは役員報酬がない場合だからです。

何らかの理由により社長の給与がゼロ、もしくは報酬が極端に少ないのであれば社会保険には加入ができません。月額最低保険料との兼ね合いにより、最低でも数万円程度は支払われていることが加入のためには必要とされているのです。

ただ、経営管理ビザを取得するのであれば一定以上の役員報酬は設定していなければビザの許可が下りないのが通常です。一般的には20万円弱、最低限生活ができる程度の報酬設定をしていることが求められます。そのため経営管理ビザを取得した方が1人会社を立ち上げた場合であっても社会保険だけは加入をしなければいけません。

社会保険が必要な理由

そもそもなぜ1人しかいない会社であっても社会保険に入らなければいけないのでしょうか。実体としては個人事業と大差ないため、国民年金や国民健康保険でも良さそうにも思えます。

しかし個人事業とはビジネスを行う主体が異なるという大きな違いがあります。個人事業だと個人がビジネスを行いますが、会社だと法人がその主体となります。
そのため実質社長が会社を動かしているとしても、形式上は社長個人も法人から報酬を受ける立場にあるのです。

そして健康保険法や厚生年金保険法においては、適用事業所に「使用される者」はそれぞれの「被保険者」である旨規定されており、ここでの「使用される者」は「法人から労務の対償として報酬を受ける者」を意味すると考えられています。
つまり法人から報酬を受け取る者である社長は、同法における「使用される者」に該当するのであり、「被保険者」ということになるのです。こういった理由によって1人会社の社長でも社会保険が必要とされます。

一般的には社長に対し使用される者というイメージはないかもしれませんが、ここでは上のように被保険者に当たるということを覚えておきましょう。

小さな企業で社会保険に加入していないようなところもあるようですが、多くは法令違反によるものですので、未加入でも許されると思わないようにしましょう。

経営管理ビザに必要な保険の種類

前述のように、経営管理ビザにおいては

  1. 「社会保険」
  2. 「労災保険」
  3. 「雇用保険」

という3つの保険が関わってきます。

そこで、それぞれどのような保険なのか、対象者や負担に関することなどを把握しておきましょう。

社会保険

社会保険はある単一の保険を指す名称ではなく、多くの場合は怪我や病気をした際に利用する「健康保険」と、老後に年金をもらうための「厚生年金保険」の2つを含むものと考えます。

広義には労災保険や雇用保険を含めて呼ぶこともありますが、ここでは労災保険および雇用保険とは区別して考えます。

いずれにしろ、労働者を保護するという観点からできた保険です。

健康保険では、加入していることで医療費がかかったときでも原則3割が負担されるため、本来より安い医療費で治療が受けられるようになります。

これに対し厚生年金保険は労働者が加入する年金制度のことであり、一定の掛け金を納めておくことで将来的に老齢年金を受け取ったり障害年金を受け取ったりすることができるようになります。

対象者

すでに説明した通り、社長1人だけであったとしても加入が求められます。

つまり法人の事業者は原則すべて社会保険の適用を受けます

負担する保険料

具体的な金額は給与に応じて変化するため保険料率と給与を知る必要がありますが、保険料率は改正が頻繁になされているためよく確認をしておかなくてはなりません。

過去の保険料率で計算をしてしまわないようにしましょう。

なお、社会保険料は従業員と会社がそれぞれ一定比率で負担をすることになりますので、例えば保険料が3万円になったとすれば従業員と会社が1万5千円ずつ負担をして支払うことになります。

社会保障協定

外国人に対する社会保険の場合、「社会保障協定」というものに着目しましょう。

これは外国人の方が本国における社会保険に加入していることで起こる、二重払いを防ぐための協定です。日本と協定を結んでいる国であれば、日本に在留して社会保険に加入した期間を、本国での保健期間に算入することができます。

脱退一時金

社会保障協定により本国との二重払いの問題は解決することができますが、日本で支払ったにも関わらず将来日本にいなければその恩恵を受けることができないという問題もあります。

この問題に対する制度が「脱退一時金」です。

例えば外国人の方が経営管理ビザで日本にやってきたものの、その後本国に帰ることや、別の国に移り住むということも珍しくありません。

そうすると年金などが受け取れなくなり、本人は保険料を支払ったことに対する見返りを得ることができません。そこで、このような方は日本から出国後に脱退一時金の支給申請を行いましょう。

上限額が決まっていたり加入期間の条件が定められていたりなど、必ず受け取ることができるものではありませんが、日本から出ていくことになった際はこの制度を利用できないか、検討するといいでしょう。

労災保険

労災保険とは、従業員が仕事中、あるいは通勤中に受けた負った怪我や障害に関して保険の給付が行われるというものです。

社会保険と違って会社側が保険料を負担するという特徴があります。

仕事中に怪我や障害を負ったり病気にかかる、死亡したりすると「業務災害」に該当します。通勤中にこれらが発生すると「通勤災害」と呼ばれます。

なお、労災保険の届け出は会社の所在地を管轄する労働基準監督署に対し行います。

対象者

労災保険では、雇用形態問わず、従業員であればすべて保険の適用対象となります。

そのため正社員はもちろん、アルバイトなども含まれます。外国人社員も対象者となります。
ただし対象範囲は従業員に限られますので、原則は社長等の役員は労災保険の対象から外れ、1人会社では加入の必要がありません。

負担する保険料

保険料額は従業員の給料および業種から算定されます。

会社側が負担、一括での前納となりますが、金額自体それほど大きなものではありません。

雇用保険

雇用保険は、失業した従業員が失業給付金を受け取るために加入するものです。

この保険には、従業員が再就職をするまでの生活を安定させるという目的があります。

対象者

労災保険同様、雇用形態問わず従業員がいる場合には必ず加入が求められます。アルバイトでも外国人社員でも関係ありません。

ただし一定期間・一定時間以上の労働がなければ適用除外されることがありますので、あるシーズンにだけバイトを雇う場合やごく短時間のシフトなどであれば必要がないこともあります。

負担する保険料

雇用保険は、会社と従業員が負担して支払うことになります。

業種によって異なりますが、多くの場合やや企業側が多めに負担をすることになります。

経営管理ビザ取得者が社会保険に入るメリット

経営管理ビザ取得者は会社を立ち上げたなら社会保険に加入することになります。そして社会保険に加入した場合、医療費の負担をしてもらえることや年金が受け取れるようになるというだけでなく、経営管理ビザならではのメリットもあります。

そもそも社会保険の加入・未加入はビザの許可において条件とはされていませんので、ビザ申請時に加入していないからと言って許可が必ず下りないというわけではありません。

しかし経営管理の3年ビザや5年ビザの更新を受ける場合には、社会保険に加入している事実が有利に働きます。

一般的に長い期間の更新許可を得るためには、

  • 利益が安定して出せていること
  • 安定した仕事の受注ができていること

などが重要だと言われていますが、複数名雇用をしており、かつ社会保険に加入していることもここでの判断材料として扱われます。

社会保険のチェックが厳しくなっている

経営管理ビザの許可を判断する上で社会保険の加入をしているかどうかは必須のチェック項目とはされていないということでした。

しかし会社等は社会保険への加入が義務とされていることから、当該ビザの申請時においてもチェックされる可能性はあります。

あくまで法律上、加入をしていないと許可されないとは定められていないだけであり、実務上ここを見られることも考えられますので会社を立ち上げたならビザの申請という観点からも社会保険にも加入するべきと言えます。

社会保険に入らないとビザの更新できない場合もある

社会保険に入っていないことが影響してビザの更新ができないということも起こり得ます。

さらに、経営管理ビザだけでなく永住権へ変更をしようとする場合には加入しているかどうかが影響しますので、将来的にその予定があるならなおさら加入しておかなくてはなりません。

関連記事:経営管理ビザから永住権取得へ【3つの必要条件を解説】

社会保険に入っておかないとゆくゆくの永住権取得に影響を及ぼす場合もある

経営管理ビザでの更新では「実務上保険加入有無が見られる可能性がある」という程度でしたが、「永住」への変更申請の際には社会保険加入が条件とされています。

そのため未加入の状態だと永住の許可が下りません。
このことは社会保険に限らず、例えば国民保険加入の義務があるにも関わらずこれをしていない外国人にも「永住」の許可はでません。

経営管理ビザの保険手続きは複雑なので専門家に相談を

労災保険や雇用保険、社会保険等に関しては制度が複雑で、完全に理解するのは難しいかと思います。

そこで加入の必要があるということだけ押さえておき、詳しい内容は専門家に相談するようにしましょう。この分野は社労士(社会保険労務士)が専門としていますので、社労士のいる事務所に依頼するか、もしくはビザの申請も兼ねているのであれば社労士との連携が取れる行政書士に相談をしてみてもいいでしょう。

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